最近、芸能人の木下優樹菜さんが自身がADHDであることを公表して話題になりましたね。
ADHDは上のニュースのように、たいていは子どもの発達障害として話題に上がるので子どもの病気のイメージがあります。
しかし、実際にはADHDの子どもの多くはそのままの性質を持って大人になります。
つまりADHDは意外なほど身近な大人にいるのです。
もしかしたらあなたも気づいていないだけで実はADHDかもしれない。
自分や身近な人がADHDの疑いが強かったり診断を受けた場合にどう受け止めて、どう対応していくべきかを一緒に考えていきましょう。
本記事を読めばADHDを否定するのではなく肯定的に受け止められるようになるかもしれません。
まずは知ることから始めましょう。
ADHDとは
ADHDとは注意欠陥・多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)という発達障害のことを指します。
ADHDの特徴は「不注意・多動性・衝動性」の3つに分けられます。
全てを備えている人もいるし、どれか1-2個だけ強く出ている人もいるといったイメージです。
日本国内の成人期ADHDの割合は1.65%であるという報告があります。
1.65%は言い換えればおよそ60人に1人です。
「大きめの職場であれば誰かしら1人はいる」くらいの割合ですね。
さて最近では成人期ADHDに対し社会的な関心が寄せられるようになっています。
ADHDが社会的な問題となるのは、「集中が続かない」「忘れっぽい」「タスク管理に失敗する」など業務に従事する上で障害となる性質を持っているからです。
私も以前の職場で明らかにADHDと思われる人物と一緒に仕事をした時期があります。
彼女は通常ではあり得ないようなケアレスミスを連発あるいは同じミスを繰り返していました。
それによって彼女の仕事のみならず同僚や私の業務まで悪影響が出ることはよくありました。
まさにADHDの問題点って感じでした。
彼女は明るかったし能力も高かったのもあって特に疎まれることはありませんでした
また、不注意以外にも多動性や衝動性(思ったことをつい言ってしまう)から周囲とのコミュニケーション不全・人間関係の構築失敗に陥るケースもあります。
こういった社会人として生活する上で障害やトラブルになりやすい性質を持っていることが問題視される訳ですね。
ADHDの社会人としての主なトラブル
ADHDあるあるのトラブル対策法について気になる方は以下の記事をお読みください。
ADHDの診断
ネットで検索すればいくつかの簡易診断テストを受けることが可能です。
正確にADHDの診断をするためには、必ず精神科を受診し医師の検査を受ける必要がありますので注意してください。
ネットを探したら出てくる診断テストはあくまで「もしかしたらADHD??」と思うための簡易的なものと思ってください。
もしあなたや身近な方が「ADHDっぽい特性のせいで社会生活に悩んでいる」状況であれば、医療機関の受診をおすすめします。
ちなみに治療方法としては投薬・カウンセリング・環境療法があります。
しかし現状は治療によって完璧に社会との不和・ズレを無くすことは難しいため、その特性を把握し力を発揮できる業務に従事するほうが幸せになれるかもしれません。
ADHDには別の発達障害も併発することがある
ここで注意したいのはADHDは単独で発症しているものもあれば、学習障害や自閉症スペクトラムのどちらかあるいは両方を併発している場合もあるということです。
併発している場合は単独よりも更に一般社会への適合性が落ち、より医療機関の介入が必要となります。
ADHDの困りごとポイント
難しい話は一旦休憩して、ここでなめくじ個人の「ADHDっぽくて治したいなぁ」と思っている困りごとを紹介します。
ちなみにおそらくなめくじは『不注意優勢』の軽度ADHDです。
これら困りごとがグサグサくるあなたはADHDかもしれませんよ?
常に過去の自分と心理戦を繰り広げている
本当に物をよく失くします。
見つけやすいようにスマホや小物は目立つ色にする習慣が付いています。
周りから私を見ると「メガネを頭にかけてるのに探している人」みたいな感じなんでしょうね。
ちなみに私自身は全然整理自体は得意ですし、むしろ気になって指摘するタイプです。
探し物は理解のある妻に頼ることも多いですが、頼る前にまず「自分ならここかあそこに置くハズ…!」みたいに過去の自分と心理戦をしています。
勝率は体感3−4割ですね。
昨日は数日前に失くした目薬が洗濯機から出てきたそうです。
なめくじレベルになると失くしても焦らず「もう1個の目薬を代用しているうちにどっかから出てくるやろ」みたいにドッシリ構えられます。
電気つけっぱドアあけっぱ
今は意識してだいぶ改善しましたが、どうも洗面所の電気やトイレなどのドアを開けっ放しにするらしいです。
最近はお米を全部よそい終わった後の炊飯器の電源を切り忘れてよく注意されています。
話を聞いているようで聞いていない
何かよそごとをしている時に話かけられると、そっちの手を止められない(習性)ので「ふんふんなるほどねー、それは大変だ」って手を動かしながら聞いてます。
「(よし、作業終了。んで、今話してた悩みって結局何だっけ?)」
とにかくすぐ忘れる
本当に他の人がすごいなって思うのはエピソードトークができること。
一緒に旅行に行ったとして、「どこそこで何々を見ながら〜〜の話で盛り上がったよね」って言われても全く覚えていません。
「あ〜確かになんかそれっぽいとこで一緒に楽しく過ごした気がするよ!(本音)」みたいな。
まあこの性質は嫌なこともすぐ忘れられるから一長一短なんですけどね。
人の話が終わる前に打ち返し始める
人って起承転結とかで喋るじゃないですか。
話を聞いてる時に、どうしても承くらいでだいたい話の中身が分かって(分かった気になって)転あたりで結に対しての返事をしてしまいます。
誤解が起きたり相手がスッキリ喋れなくてムッとされたりするから、なるべく黙っているように気を付けていますけどね。
相手がキャッチボールしたいのは分かっているのに、なぜかバットを持って打席に立っちゃうタイプですね。カキーン。
街を一緒に歩いているとポンポン話題が飛ぶ
街を見てると面白い看板とか派手な格好の人とかかっこいい建物とか興味を引かれるものが沢山ありますよね。
「同僚の〜〜ちゃんに仕事でこんなこと聞かれててさぁ、これってどう返事したらいいのかな?」
「わー大変やなそれは…ところであの人の髪色すごくない??ええなあ俺もやりたいなあ、そういや君の同僚の○◯さんも髪の毛派手だよね〜(仕事の話に戻してるつもり)」
「…(アドバイスゼロやんけ💢)」
時間が守れない
美容院の予約が10:00で9:50に家を出たら間に合うとします。
9:48くらいで、「トイレいっておこう→トイレットペーパーが後ちょっとで切れそうやな、ストック探そ→シャンプーも切れそうやな、帰りにドラッグストア寄るとして他にも切れそうなもの無いか確認しておくか」みたいになって、9:55くらいに家を出る羽目になります。
時間を守る気はあるのに中々守れません。
ちなみにホテル宿泊時など要らん興味が出ない場合は、チェックアウト時間前にきっちりロビーに到着できます。
これも本当はドヤることじゃないんですよね…きっと…。
時間感覚がガバガバ
当ブログは仕事場で書いているのですが、妻に「あと10分くらいで書き終わって仕事場出るね」って伝えてから作業していたら30分以上経っていることが稀によくあります。
ADHDの時間感覚を信用してはいけない。
突発的な行動が抑えられない
ある目的地に向かって一緒に歩いていたとします。
途中で「そういえばこの近くでついでに欲しいものがあったんだ!」って思い出したら、どうしてもなめくじはそちらの店にも向かってしまいます。
ちなみにもしあなたがそれを断ったら「先に目的地行っといて!後ですぐ合流するから」という返事が来ます。
「相手との予定や約束<自分が今やりたいと思ったこと」なんですよね…。
こういう衝動性は仕事に関わっていたらなんとか自制できます。
でも「多動・衝動優勢だと無理なんだろうなあ」とも感じます。
ADHDの特性を強みに変える!さて、やっと本題です。すみません。
上記のなめくじエピソードを見ても分かる通り、ADHDにはその特性によって人と関わる社会生活を送る上で不都合が起きるシーンがよくあります。
しかし見方を変えてみたらどうでしょうか?
外部からの刺激ですぐ注意が切れてしまうのは、プロジェクトの進行や未来を監督する立場に向いています。
「思い立ったら行動しないと気がすまない」という衝動性は起業家や会社の大きな意思決定をする社長に向いています。
実際にミュンヘン工科大学で行われた2016年の研究では、ADHDと診断されている起業家のうち2/3が起業して成功を収めているという結果が出ています。
日本での10年企業生存率が約26%と考えると2/3(66%)というのは驚異的な成功率です。
それ以外にも時間感覚が薄いのは、一つのことに没頭できる能力とも言えます。
物事は全て角度によって見え方が変わるんですね。
例えばこんなに社会生活に問題が起きるADHDは『天才病』なんて呼ばれることもあります。
実際に有名人でADHDを公表・疑われている・自分で疑っている人は多くいます。
特に今の世界経済を牛耳っている大企業の創始者にADHDが多いのは非常に興味深いですよね。
ADHDはある意味、日常能力や協調能力を失って創造能力に特化させたような特性を持っています。
社会の歯車になるのは苦手だけど新たな歯車を作ることは得意、といった感じですね。
ADHDに向いている職業・分野
ADHDは現在社会の枠組みから外れて新たな価値を創造する職業や分野に向いています。
世界の新たなルールを作る側にいるとその才能を発揮しやすいでしょう。
起業家
リスクを理解しながらも取りにいける楽観性や衝動的な行動、没頭する特性から来る施策のスピード感、思考能力の高さと速さから来る新たな価値の創造。
ADHDの特性を最も活かせるのは起業家であると言えます。
起業家には指示を出す人間がおらず、むしろ自分についてこいという立場ですので協調性の無さはあまり問題になりません。
新たなジャンルへ挑戦をする際のプロジェクトリーダーにも向いています。
ただし、いずれも実務を掌握したり本当にマズい時にブレーキをかける参謀役が必要です。
学者
研究に重きを置く学者はADHDの創造性と集中力を活かす職業の一つと言えます。
知識やデータをもとに高速思考をし仮説の立案ー検証ー修正の1人PDCAサイクルを回せる反面、研究チームのメンバーとの協調作業や外部組織との折衝はあまり得意としません。
ただし、学者は基本的に協調作業が嫌いな人間が多いし(偏見)外部からもある程度そう思われているので大丈夫です。
自分の興味がある研究ジャンルと稼げる研究ジャンルが異なる場合は、ある程度商業主義の退屈さを許容する力が要ります。
クリエイター
時間や場所に縛られず活動できるクリエイターはADHDの創造性を環境によって邪魔されません。
そしてアートデザイナー、フォトグラファー、音楽家などクリエイティブな職業はその創造特性を遺憾無く発揮できます。
また、自分に興味があるジャンルには時間を忘れて没頭できる集中力は成果物を作り上げる上で非常に有用です。
プログラマー
ADHDの特性は仕様書に沿ってコーディングしていく中で、独創性を発揮して効率化することに向いています。
また、IT業界の日進月歩で新たな知識・刺激に触れられる点も飽きずに仕事を続けられるモチベーションになります。
システムエンジニア(SE)はプログラマーが兼務する会社も多いですが、SEの対外交渉業務はADHDのやや苦手とするところです。
タスクを与えられて、それを達成するための手段は問われないというプログラマーの自由度のほうが特性としては向いているでしょう。
似て非なるものですが、ソフトウェア・アプリ開発者も独創性が発揮できるADHDに向いています。
ADHDに向いていない職業・分野
おおよそ実務家と呼べる分野に不向きです。
ADHDの特性とも言える「常識を打ち破り新たな価値を生み出す独創性」は実務家には不必要であり、ルールを守らせる側にいても自ら率先して違反をして組織に悪影響を与えてしまいます。
また組織の中で他者と協調して業務遂行する能力が低いため、人間関係に不和を生む可能性もあります。
単純作業従事者・公務員
多動という特性を持つADHDは同じ作業を繰り返すことを苦手とします。
単純作業を正確にこなす必要のある工場作業員や、ルールに則り粛々と規定の手続きを行う公務員などは残念ながら不向きです。
ケアレスミスを連発して、周囲からの信頼と居場所を失う危険性があります。
会社員
会社員と言っても業務内容や環境にはかなり幅がありますが、その中で権限の無い(少ない)プロジェクトの進行や運用・保守管理には不向きです。
また権限はあっても業務内容に創造性が無く、ある程度決まった型で動くような分野ではADHDの特性を活かすのは難しいでしょう。
組織の中で人間関係に動きを縛られやすいのもADHDの特性を阻害する要因の一つです。
事務職
どう考えても不向きです。
事務職にはADHDの行動力や独創性は全く必要が無いどころか、仕事やチームにとって悪影響を及ぼします。
忘れ物をしやすかったり単純ミスが多い、時間や約束を守れない点も事務職に向いていない理由の一つでしょう。
まとめ
ADHDとは注意欠陥・多動性障害のことを指し、子どもだけでなく成人期ADHDも存在します。
ADHDは汎用型というより特化型のような特性を持っており、一般的な社会生活を送る上で障害となる場合が多いと思われます。
しかし裏を返せば、ADHDの特性を活かせるような職業や分野に従事することで周囲に貢献したり社会的成功を収めることも可能です。
あなたやあなたの身近な人にADHD(疑い含む)がいて自身の特性について悩んでいるのであれば、ADHDの特性を存分に活かせてそれを誇りに思えるような環境に身を置くことをおすすめします。
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